明らかな得点に対しては、笛を吹く必要はないとしています。しかし、例えば、ゴールラインをわずかに越えたボールをゴールキーパーがはじき出した場合には、守備側プレーヤーはプレーを続行することがあります。このような場合には、得点を明らかにするために笛でシグナルをする必要が起こります。このように、両チームのプレーヤーがゴールインの有無を判断が出来ない状況の場合には、主審の笛が必要となるのです。その際、主審は笛を短めに鋭く吹きプレーを止め、しかる後、笛を長めに吹きセンターマークを示すとよいでしょう。 

選手が出血したままプレーを続行することを禁じているのは、ご存じのようにエイズの感染を予防するためです。選手は競技中に常に相手選手と激しく接触します。そのことによって血液の接触、付着が予想されますので、エイズ感染の危険性があります。一方、審判の場合は、その危険性はありませんから、膝のすりむきによる怪我の出血程度では、そのまま審判を続けてよいでしょう。ただ、出血が多く血が流れたまま審判を続けるのはよくありませんから、アウトオブプレーを待って、止血する方が良いと考えられます。

第１の質問ですが、これは、アイスホッケーやハンドボールのルールにある、２分間の退場処分というようなものを指しています。

第２の質問ですが、競技中に負傷者が出て、レフェリーが担架を入れた場合は、その競技者は担架に乗ってフィールドの外へ出ることになります。重傷者は字句通りに解釈するよりも、主審が担架を必要とすると判断したと考えるのが良いでしょう。この競技者が競技に復帰するためには、競技が再開された後に復帰出来ることになります。負傷が直ったからといって、直ちに、競技が再開される前に復帰することは出来ません。

第３の質問は、得点後の喜びの表現としてユニフォームを脱いだ時の問題ですが、アンダーシャツのスローガンや広告については、第４条競技者の用具にスローガンやメッセージ、あるいはイメージ、広告を見せてはならない。あらゆる反則に対して、競技者およびチームは競技会の主催者によって罰せられる。と記されています。従って、そのことによって警告はないと考えられます。

基本的には審判はノーコメントで対応すべきです。このような場合、多くは審判の判定上のことについて、抗議を交えての質問の形で乗り込んで来ます。そのような時に親切心で答えますと、思わぬ方向へ事態が進み、新たな問題を生じかねません。従って、「お答えいたしません」と突っぱね、なお、迫って来るようであれば、疑問があるならば、「文書で大会本部、あるいは当該サッカー協会までお願いします」とするのが良いでしょう。

主審としては、この事実をはっきりと審判報告書に書き、もし、乱暴な、侮辱的言動があれば具体的に書いて当該サッカー協会に報告することが大切です。

ご質問の文章からは、その状況が十分つかみ切れませんが、次のような状況を考えてお答えいたします。この選手が負傷したことでレフェリーがフィールド外へ出すためにプレーを止めたのであれば、次のプレー再開までフィールドへ入ることは出来ません。従って、プレーが再開される前に入ったとすれば、いったんフィールド外へ出るように指示をします。そしてプレーを再開した後に、「フィールドに復帰するよう」シグナルするのがよいでしょう。

審判の経験が少ない、高校生や中学生と組んで審判をすることは、よくあることです。そのような場合の主審の心構えとして必要なことは、すべての判定の最終責任は自分にあるということです。従って、主審の判断として、判定しなければならないことがあります。そのため、打ち合わせの時に、「貴君とは違う判断をする時があるので、その時は私の笛に従って下さい」ということを理解させておけば、気持ちよく協力してくれるでしょう。また、主審が常にイニシアチブをとって笛を吹くことはどの段階でも必要なことであることも、知っておいてください。

競技規則第５条において主審の職権と任務の中に「タイムキーパーを務める」とあります。第７条試合時間には「空費された時間の追加」の項では、競技者の交代、競技者の負傷の程度の判断、負傷した競技者の搬出、時間の浪費があった場合には、その時間を追加する。つまり主審はロスタイムをとることになっています。

従って、ストップウォッチ一つでは、何分ロスタイムをとればよいかが判りません。そこで、もう一つの時計はキックオフから止めることなく流しておけば、ストップウォッチと見比べることによって、ロスタイムを計ることができるのです

（１）試合が天候等の理由で続行可能か否かの判断は主審の権限として競技規則の中に示されています。それは、第５条主審：7.審判員の責任に次のように書かれています。
主審または他の審判員は以下のことに法的な責任を負わない。
●フィールドやその周辺の状態または天候の状態が、試合を開催できるかできないか。
●何らかの理由による試合中止の決定。
このことから主審にはその日の試合が安全に実施出来るか否かの判断を下す権限があることになります。
（２）試合が中止された場合は、特に大会規定で決まりがなければ改めて最初から試合を行うことになります。
（３）中止された試合の中で主審から警告や退場の処分を受けた場合は、試合が中止された場合に消えることなく残ることになります。それは、以下のことによります。
日本サッカー協会の懲罰規程「懲罰基準の運用に関する細則」
第６条（試合が中止等となった場合の懲罰の消化）
①試合がいずれのチームの責にも帰すべからざる事由により開催不能、または中止となった場合には、当該試合中に出された警告・退場・退席の処分は効力を失わないものとする。

　ご質問の二つのケースともに、ＧＫがプレーできない状況にありますから、その回復のために一時プレーを止めて欲しいとアピール出来ますが、そのための条件が必要になると思います。それは、ボールが自陣ゴール前にあって両チームが争っている状況では、主審としてはプレーを止めることは出来ないと思われるからです。
１）の場合、目にごみが入ったために正常なプレーが不可能となった状況ですから、一番よいのは味方プレーヤーがボールを外に出しアウトオブプレーにして、主審に申し出て治療をすることです。フィールドプレーヤーであれば、主審は、その選手に治療のためにピッチの外へ出る指示をして、直ちに再開することになります。しかし、ＧＫの場合はピッチ内で治療をして、再開することになります。いずれにしても、ＧＫが正常にプレーできないことを主審に伝えて、アウトオブプレーにして治療することになります。最初に述べましたように、ゴール前で争っているところでは主審はプレーを止められませんので、ボールを中央へ大きくクリアするか、蹴り出せば、主審はプレーを止めることが出来ます。
２）の状況（相手チームの得点の機会であったとしても）の場合には、その瞬間には攻撃側にアドバンテージがありますから、主審としてはプレーを止めることはできないと考えます。ただＧＫが頭から泥水をかぶり目が見えない状況ですから、主審としては、出来るだけ早い時点でプレーを止める必要があります。この場合も１）と同じくボールを出来るだけ早くピッチ外へ出して主審にアピールして試合を一時中断してもらい、顔を洗う（治療する）のがよいのです。

このケースは主審が副審を信用していないと見るよりも、主審の不注意あるいは旗の見落としと見るのがよいと考えられます。また、副審にも主審の誤りを伝える必要があったと思われます。キックオフ前に主審が自分の判断の誤りに気付いて得点を取り消してフリーキックで再開したことは間違いではないにしても、選手からの批判を受けてから行動を起こしたことは主審としての権威を失うことにつながることです。

審判の手袋着用については特に規程はありませんが、夏の暑い時に帽子をかぶらないように冬季には一般的には手袋を着用しません。その理由としては、審判は選手と同じ気象条件下で審判をするという事からきていると考えられます。
選手の中には非常に寒い時に血液の循環をよい状態に保つために手袋を着用することがあります。しかし多くの選手は手袋を着用しないでプレーをしています。そのような状況の中で審判が手袋をしている事は決してよい印象を与えません。関東地方の気象条件では、多くの場合手袋の着用を必要とするまでには至らないと思われます。審判がトランクスを着用していたり、ジャージを上に着ていることを見かけることがありますが、あってはならないことです。ゴールキーパーのような特殊なポジションの場合はトランクスを着用することがありますが、他の選手はみな正規のユニフォームで試合をしなければならないのと同じように、審判は正規のユニフォームで審判に当たることが求められるのです。　

大変大きなご質問ですね。一度にお答えすることは、なかなか難しいことです。きっと、貴方の試合経験の中に審判に対する疑問が生じたのではないかと思います。そのことに触れてくれると答えが具体的になると思います。今日のところはきわめて一般的な答えにならざるを得ませんのでご了承ください。
ご存じのようにサッカーに限らず競技はすべてルールによって成り立っています。サッカーは17条の条文に書かれていることによってサッカー競技が成立いたします。ところが、試合をする選手は必ずしもルールに詳しいとはいえません。どちらかといえばルールをあまり知らなくても、試合に出てきます。また、ルールを心得ていても、あえてルールを破る選手も出てきます。そこで選手がサッカー競技らしいサッカーを行うためにはルールを守らせる必要があります。それをすることが出来るのはチームのキャプテンでもなくコーチでもありません。審判のみが可能なのです。ここに審判の存在意義があるのです。

ご質問のケースはイエローカードを示し警告します。レフェリーの権限の及ぶ範囲と時間については2019/20競技規則第5条主審懲戒処置に「ハーフタイムのインターバル、延長戦、ペナルティーマークからのキックが行われている時間を含め試合開始時に競技のフィールドに入ってから試合終了後までイエローカードやレッドカードを示す、また、競技会規定に認められているならば一時的退場（シンビン）を命じる権限を持つ。」とありますから、レフェリーは見過ごしてはならなかったと考えます。

判定の最終的決定は主審が行います。副審のシグナルは主審の判断を助けることにあります。従って、この場合は主審としての自分の判断で行動するのがよいのです。この場合、主審は副審の旗を採用しないのですから、今のあなたのシグナルは採用しませんというシグナルを、手を挙げて示すことが大切です。それは主審と副審の連携を大切にすることが重要だからです。

より正しい判定をするための基本は、選手のプレーの近くで見ることが第一にあげられます。その上で両選手の争う瞬間を見るよい角度とは、を考えます。それは争点を横から見るのが、正しい判定につながるのです。選手の背中から見ますと二人の選手が重なっていますから、距離感が明確でなく、選手の陰になっているところが、よく見えないために誤審を招くことにつながるのです。丁度、相撲の行司が横にステップして取り組みを横から見ようと動いているのとよく似た位置であると思います。この争点を縦に見ることを「串刺しに見る」といって、審判の戒めの言葉になっているのです。

担架を必要とするような負傷の場合は、少なくともすぐにプレーに復帰出来ないような場合になります。このような場合は主審は時計を止めて事故の処理に当たりますので、あまりプレーの再開を早めることのみを考えるのではなく出来る限り、事後の処置がやりやすくすることが大切です。

フィールドの中央付近であれば多少バックスタンド側に寄っていても、事後の処置が一番やりやすいベンチサイドに搬出することです。ベンチサイドであれば治療が早く、しかも、復帰する時には、インプレー中でも主審の合図で復帰できます。また、重傷で救急処置が必要の場合には、本部との連絡も速やかに出来ることになります。ただ、タッチラインやゴールラインに近い場合は、そこから近いラインから搬出するのが良いと考えられます。

このような場合は選手が主審に無断でピッチの外へ出たこととはなりません。プレーの一貫としてタッチライン外を走ったことと解釈されます。

ご質問から判断すると、あなたは主審の判定に対する異議や抗議に対して何もせずに試合を進めているように見えます。ご存じのように、選手はレフェリーの判定に対しては異議や抗議をすることはできません。もし、そのようなことがあれば、主審はイエローカードを示し、その選手に警告しなければなりません。それはレフェリーの務めであることを、しっかりと自覚する必要があります。そして勇気をもって試合に臨むことです。

あなたはが心配されているように、ノーファウルの時全てに声を発するのは避けた方が良いでしょう。アドバンテージのシグナルは両手又は片手を前に出して示しますが、ノーファウルについては基本はシグナルは必要ありません。それは主審が笛を吹かないことがノーファウルということだからです。ノーファウルのシグナルが必要と思った時、例えば、選手が自ら判断してプレーを止めて止まってしまった時であれば、片手を小さく下の方で振ればよいでしょう。声は時に、ここぞという場面（あくまでも必要と感じた時）で「ノー」と言ったり、「プレーを続けなさい」と言ったりします。

判定に異議を示して、主審を取り囲むシーンを見ることがありますが、主審はその全員にカードを示すことはありません。競技規則では、異議を唱えた選手にイエローカードを出すことになっているのですが、実際には取り囲んだ選手全員に警告することは不可能なことなのです。要は、判定に対して異議は認められないことを、はっきりと示すことが重要なのです。そのため、最も強く異議を唱えた選手にイエローカードを示し、そのことで主審の強い意志を明確にし、騒ぎを鎮めるとともに、試合の再開を早めることが大切です。